三年前のある夜のことです。
マダムが、あるものを食べさせてくれました。
庭の野草の天ぷらでした。
僕にとって草の味とは、昔飲んだ青汁の青っぽいなんとも表現のしにくい、正直にいってまずいものという記憶しかありませんでした。
子供の頃、野球少年だったぼくがふざけて食べさせあったグラウンドの芝も、同じ味がしました。
草を食べるなんて信じられない。
そう思っていたものの、和食さんの天ぷらで「ゆきのした」という野草がつかわれることがあるのは知っていたましたが、それはあくまでも例外中の例外だと思っていました。
マダムがあげてくれた野草の天ぷらは、予想に反して5種類もありました。
実に白けた気分で口に入れた僕は次の瞬間、仰天しました。
ちゃんと味があります。
びっくりして、次々に口に放り込むと、すべて味が違います。
仰天すると同時に、「これはいける!」という直感がきました。
ここから今のあしぇっと八ヶ岳は始まりました。
当たり前にある、足元のもの。
誰も見向きもしないありきたりのもの。
その魅力に気がついた時から、僕はシェフとしてこれまでとまったく違う道に踏み込みました。
その感動と驚きを、お店では料理として、ブログでは文章として、双方から表現してゆこうと思います。
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