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レシピが産まれる思考過程、第二回

最終更新: 2019年4月17日




レシピが産まれる思考過程、第二回です。



No.2[松葉のブイヨンでポッシェしたスズキ]



あしぇっと八ヶ岳を始めて、しばらくこと。 夫婦で大げんかをした。


それは、冬の寒い日だった。



妻、曰く。

「野草フレンチと名乗っているけど、あなたの料理は、野草を使っていない」


僕は野草にはまったく興味がなかった。ほんの1年前まで。


20年近いキャリアの中で、ハーブすらさほど引かれれず、

「ただの飾り」と思っていた草系に興味のないシェフだった。



ある晩、妻からうながされて食べてみた野草の味に、

直感的に「使える!」と思った。



だから、妻と二人でお店を始めるにあたって、

彼女の得意の野草を看板にしようとは決めたけれど、

本当のところ手探りで歩んでいるだけの、「草」初心者だった。


だから、自分の中にイメージもなく、どう活かすかもわからず、

ただ置くくらいしかできない料理になっていた。



妻は、それを感じて、あえて苦言をていしてくれた。


しかし、見栄の塊でしかない僕には、それはとてもキツイ指摘で、

理性的になれず、つい喧嘩になってしまった。



君が摘んでくる個性のない草をどう活かせばいいんだ?


もっと個性のある草はないのか?



そう言い放ちながらも、引き下がるわけにもいかず、

悲しさと悔しさを抱えて森に入って歩いた。




お客様からお金をいただく以上、

それ相応の感動がなくては、お店は続くはずがない。


野草歴も短く、知識もイメージもない。

かつ今は、冬だ。芽吹きもないのに、どうすればいいというのか?



そんな時、地に落ちた松の葉の緑が目にはいった。

色のない世界に、唯一といっていい色の存在。



以前雑誌で、あるシェフが、

まつぼっくりを燃やして子羊を燻製している記事を読んだことがある。


松の葉も何か使えるのではないか?


何もわからないから、まずは実験から。



まず生でかじる。 次は、煮出す、焼く。


ベーシックな調理法から、試してみる。



フランス料理には、香りを移す手法がいろいろある。


アンフュゼと言われる「煮出す」手法をためしてみる。



鍋の水が温度が上がるにしたがい、不思議な、でも懐かしいような香りがたってくる。



その液体に少しの塩をいれて飲んでみると、

ほろ苦くしかし味わいのある味。こんな味、味わったことがない。



味わった瞬間、これは魚にあう!という直感が来る。


松葉のブイヨンをつくり、

その中でやさしくポッシェ(煮る)する。


これだ。



手元にあるスズキ脂分が松のクセのあるブイヨンのよいサポート役になってくれるはず。



付け合わせは、根菜類を主体とした野菜。


これは普通に塩茹でしてやさしく甘味を引き出したものがよい。


ほろ苦さと魚の肉質を縁の下で支える役目。



こうして、新しいメニュー、

松葉のブイヨンでポッシェしたスズキはできあがった。



調べるまで、まったく知らなかったのだが、

松の葉は食材で、パウダーが健康食品として売られていた。 必須アミノ酸の7種類を含む24種類のアミノ酸を持ち、松ヤニも不飽和脂肪酸が含まれてる。 アロマセラピーでも、松は精油として使われている。 さらにただの伝説だけど、中国の仙人は松の葉だけを食べて長寿を得ていたというのもある。

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